新たな時代の胎動(三)
おぼろん

新しい噂話に、クールラントの国民は逡巡した。
その噂に熱狂する者もあった。エインスベルの味方をする者もあった。
ほぼ二年近い時間、エインスベルは監獄に幽閉されていた。
次第に、エインスベルは悪なる者ではないのか、という噂が広がっていく。

ヒアシム・カイン、これは強大で、しかも禁忌の魔法であった。
エインスベルは、悪魔の盟約を受けた者ではないのか、
そう人々は考え始めたである。この戦いでは、
多くのクールラント兵も戦死していた。

その咎が、エインスベルにあったのではないのか、というのが彼らの思いだった。
人々の声は、次第にエインスベルの脅威を語り合うようになった。
アースランテの軍団を潰走させる、それは並大抵のことではなかったのである。

アルスレイン・ユークレイナはエインスベルである、
ということは、クールラントの国民にとっては、周知の事実となった。
「我々の犠牲は、何のためにあったのか?」国民の誰もに迷いがあった。


自由詩 新たな時代の胎動(三) Copyright おぼろん 2022-05-17 15:32:53
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