日付変更線の彩
ホロウ・シカエルボク

コントロールの無い
まっさらな時間
無いというのが正しい
及ばない範疇
関わりのない概念

首のもげたモラルが
深夜のニュース番組で
戯言を列挙してる
おれは首を掻いて
いらだちをひとつ潰す

出鱈目でよかった
どうせ答えのないもの
都合の良い出鱈目と
ほんの少しの
年老いた純情の在り方で

カーペットの染みが
三連符を奏でる
本当のブルースになる前に
眠る準備が整えばいいのだけど
温度差で軋む木材
チャーリー・ワッツが
あの世で叩くハイハットに聞こえる

まぶたの痙攣が
妙な内面の解釈に繋がったりしないように
ただの気まぐれであるように
静かな、だけど
何を飲み込んでいるか分からない
湖のそばに
いつも佇んでいるような明日なら大歓迎

三つ数えると日付が変わる
眠れない夜はいつだってそうさ
寝床の中で目を開けていると
必ず思い出す
遠い過去の薔薇の棘の痛み
あれはどこかの個人開業医の
植え込みにあったものだったっけ
その植え込みももう
建物ごと無くなっちまったけど

ノスタルジーなんて
ただの画面になって初めて成立するものさ

もう一度
使われていないアドレスで
君のことをコールする
呼び出し音を一本のラインに変換すれば
もしかしたら
宇宙まで届くかもしれないね

一瞬のまどろみの中で
星が生まれる瞬間を目にした
それは眩しさよりなにより
身を引き裂くような痛みに見えるばかりで
ライカ、君も一度は
あんな光を見ながら遠吠えをしただろうか

感情が濁流のように
深夜の罫線を流れてゆく
言葉にすると嘘に思えるものが一番正しい
確かなものを信じるのは愚か者の専売特許さ

さながら幽霊になりました
程よい時間に
呂律の回らない夢の中で会おうね
記号みたいな話をたくさん繰り返してさよならをしよう
もうしない約束みたいに
二度と鳴りはしない目覚まし時計みたいに

濡れた廊下に横たわっていた
幻想なんてすべて嘘だったのさ
冬が消えていく
ひび割れた唇の内側で
たったひとつの名前を探した

解けていく
交尾を終えた二匹の蛇のように
斑な光が飛び交って
奇妙に生々しいミラーボール
朝日が昇る頃には
死体はかたちを変えてしまう

星が終わるところを見たことがないのは
きっとスケールの問題なんだ
夜の間の世界は裏返し
剥き出しになった神経が
言い訳に収まらないものを血眼で探している


自由詩 日付変更線の彩 Copyright ホロウ・シカエルボク 2022-02-14 01:44:46
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