20211201
はるな


心の外側で謝ったり笑ったりするとき、自分を消費している感じがしてよかった。精神の空洞に合わせて身体を削って、サイズを合わせようとしていた。自分の欠けているところがはっきりと見えていて、でもなんと言ったら良いかは分からなくて、それではだめだとも思っていた、だからいくつもの物語、詩や歌は必要だったし、血も酸素もあるだけ欲しい。切ったり貼ったり抱かれたりするとき、それはみんな体を心に合わせるための作業だった。
でも思う、どうして削って削って合わせようとしたんだろう。それ以外に思いつかなかった、やり直してもきっとまた同じふうにするだろう。削って削って削って、どこにもいなくなりたかった。

風がだんだん乾燥して、土も乾いてくる。『球根は寒さに当てないと美しい花を咲かせません』。(「ママ、はなが水をあげるよ。ママは心配しないで。」)わたしはむすめをまっすぐ見ることができないときがある。優しくて、本当で、人間だから。離れていたいと思うこともある。だれか別の人間になりたいと思ったりもする。

わたしの欠けたところに、むすめの形はぴったりだった。
いつも何か探していて、それが何かは分からないけど、見ればわかる、すぐにわかるはず、と思っていたような瞬間だった。足したり引いたりしなくても良い体だったいっとき。

以前、少女だった頃、本の中にたびたび住んだ。本屋や図書館にある膨大な物語を、早く読みたい、いくつも読みたいと思っていた。
でももう今はそういう気持ちはなく、ただその急いた思いや楽しい焦りを懐かしく覚えている。
もう身体を強く削ったりしない、足りないまま疲れて、ぼんやりと座っている。そうするとかつて望んだように、わたしはだんだんいなくなってくる。





散文(批評随筆小説等) 20211201 Copyright はるな 2021-12-02 08:50:02
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