壁の向こうに
佐々宝砂

白い壁がありました
白い壁に沿って私は歩きました
私には足がありました
私の足は交互に動きます
私はそれを動かしています
白い壁があります
白い壁に沿って草が生えています
私は草をむしります
私には手があります
それは私の意図する通りに動きます
白い壁が見えます
白い壁の向こうは見えません
壁の向こうには町があって
そこにはあのひとが住んでいます
私には夢がありました
それは私の心のなか紡がれました
私は壁の向こうの町であのひとと暮らす
白い壁が立っていました
私の目の前にはいつも
白い壁がありました


自由詩 壁の向こうに Copyright 佐々宝砂 2020-11-10 20:01:35
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