鉈を振り下ろす
佐々宝砂
少しばかりいい気になったので
ちょいとばかし言葉を放ってみる
蝙蝠の羽はあくまでも灰色
カモノハシのくちばしはあくまでもやくたたず
うん そういう問題はさておいて
モノクロの映像のフラスコは美しく紫
さて大きく伸びをして
赤錆びた鉈をふるえば
きちんと正しく飛び散ってくれる血液
ああ
いつものように退屈ね
ここにいないのはわかっている
ずっといないのはわかっている
明日もいないのはわかっている
焦っても急いでも無意味なので
ゆったりと振り下ろす鉈の下に
それがないのはわかっている
春の風のなか
遠雷が光り
私はそれでも鉈を振り下ろす
自由詩
鉈を振り下ろす
Copyright
佐々宝砂
2020-04-05 00:23:55