いつもの朝に
小林ケン

最寄り駅へと向かう人波の中
今朝も私を追い越してゆく
その自転車の後部席に
ちょこんと座っているのは
いつもの男の子
漕ぎ手のお母さんが
左右のペダルを踏むたびに
ちいさな男の子の
頭も左右に揺れている
そうして揺られながら
男の子は
どこかを一心に見つめている

そのつぶらな黒い瞳に
なにを映しているの
昨日と同じ街の景色
いつもと変わらない勤め人の群れ
繰り返される暮らしの中で
人波をかき分け
懸命に自転車を漕ぐ
お母さんのうしろ姿

不意に男の子が振り返る
予期せぬことに目と目が合って
戸惑う私に
男の子は
天使のような笑顔をくれた


自由詩 いつもの朝に Copyright 小林ケン 2020-06-28 10:37:54
notebook Home 戻る  過去 未来