冬 午後 浪
木立 悟







降るもの終わらず
落ちるもの終わらず
水の底とどかず
降りつづけ 落ちつづけ


陽は漂い
鳥の背の上
曇と海のまばたき
隠すことのできない目


眠たげな光が青白く
途切れた言葉を照らし出し
荒れ野に散らばる剣の刃を
雪に向かって歩む素足


銀と鉛
砂の子 砂の子
音はすべて声になり
空に重なり 影を降らす


越えられない と あきらめて
地の折りめから引き返す
声はさらに荒れ野をひろげ
けだものの浪を打ち寄せる


剥がれ落ち また
剥がれ落ち
誰も居ない径
水たまりの陽


水底の空を歩くけだもの
止まる世界に撒かれる声
ゆうるりとゆうるりと冬は振り向き
午後に咲きはじめた夜を見る



















自由詩 冬 午後 浪 Copyright 木立 悟 2020-03-04 09:43:34
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