冬 真昼 器
木立 悟






波の下を
波の舟がゆく
荒れ地を
三つの影がすぎてゆく


灰の針で描かれた街
凍る窓に浮かぶ一房
蛾の葉 ひとつの枝
ふるえ ふるえる


窓を横切る歌の影が
雪に触れては紅くなり
掴んだ風の反対側
枯れた花のための園


雨のぼる 
雪のぼる
おりる おりる
空おりる


かけらの行方 羽と波
引かれ 曳かれ
海になるまぶた
沈みひらく四肢と笑み


海に降る雪 風と線
かがやきと交差
摺り足 発光
落雷が原を焼くかたち


砂を
蜃気楼の影を 踏みしめるとき
どこからか窪みに
流れ満ちる羽


掻き傷を集めた
水たまり
白に灰に銀に
ゆらめく


打ち寄せる
打ち寄せぬもの
縦の歪み  どこまでも
高く 昇る 歪み



切っても切っても生えくるものを
いのちとは呼ばない
がさがさと透り
ふるえている



寄る辺なきものの上に 下に
涙と曇の楽譜をちぎり
冬を冬に
こぼしつづける


























自由詩 冬 真昼 器 Copyright 木立 悟 2020-02-16 19:23:08
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