逃げ出してもビートルは追ってくる
アラガイs



 ……… …折れた舳先を横目に彼らは波止場から門を目指していた。
  一列に隊を整え宮殿に辿り着いたときには既に夜も明けていた。
  えんやこらさっ……オーイ!アレレ?誰も、、、門番も居ないでヤンス
  荒れた海原、命がけで荷を運んできたというのに……‥…どっこいのさっ!
  おい、ジャック、、ジョンは?みんなどこいきやがった!
  
  宮殿の中庭を覗けば兵士や女官たち、みんなみんなががトランプ遊びに興じている。
  これでは島の丘に上がる意味もないよな俺たち
  兵隊蟻は鼻を突き上げて不機嫌な顔
  よう、なあ、隊長殿!女王様を陸に上げてみんなで逃げるとしようや
  働き蟻の一匹が声を荒げると隊列みんなが頷いた
  そうだ、そうだべや。逃げるとしよう
  蟻たちは一斉に船着場を目指して駆けていく……… …一列に… ……縦列で ‥‥‥
……ボロ舟めざすよ、えんやこらさっ!おい、ありゃどうするべ?
  なに?あれだよ。積荷の卵、それに氏神様あのデカいカブト虫の幼虫や
  あのまま積んどいたんじゃ、こんな難破船‥陸までもたないゾ ! 
  そうさな、どうせ卵も腐るんや、んだ。んだ。
  死にぞこないの幼虫も、みんなまとめて海に放り投げちゃれや!
そうや、そうや、えんやこらさっ、!どっこいのさっ!‥……蟻どもの行進
  その細い脚の歩幅も急に軽くなったのであった。
  

  
  


自由詩 逃げ出してもビートルは追ってくる Copyright アラガイs 2020-02-21 03:11:32
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