自画像
ミナト 螢
春の吐息は明るくて迷う
風が散らした花びらの上に
座る場所もなく青い空を立て
ベンチにするなら絵を描きたい
眩しい景色に負けているのは
心を脱いでも走らないことを
覚えてしまった大人の体で
白いキャンバスに足を浸すと
踏んできた絵の数だけ
飛び散った爪を集めても
足りなくなるから
溜め息を吐く前に愛してよ
抱かれる手になりたかった私は
ピンクで縁取る指の先まで
近づいてくる桜前線が
冷たい背中に視線を送ると
永遠を射止めたように眠る
自由詩
自画像
Copyright
ミナト 螢
2019-11-27 07:52:59