Nosferatu
墨晶
夜になると訪ねてくるものがある 尾形亀之助
それは聞いたことのある話だ
よくある事なのだろう
赤い毛布に
包んだ身体を横たえ
泥濘に擬態していると
それらは何時からか
部屋の隅
もしくはわたしの傍ら
盲闇に溶けるように紛れ込んでいるのだ
即ち
痙攣する黒ずんだ大腿であり
鳥肌立つ両尻であり
首をすくめた性器であり
濡れ毛が張り付く腹であり
乳首が陥没した湯気沸く片胸である
月も星座も滅んだ夜の航海に似た
酩酊のさなか
「 ナゼオマエハ 」 と
現われたそれぞれは無言で呟く
何時だってわたしは
唯 安息が欲しいだけなのだ
Wer ist da ?
馬鹿気ているか?
その通りだ