恋する妖精
丘白月

妖精が毎晩ずっと
雷雨の夜も
凍る夜も
風が羽根を掴む夜も

いくつも季節を越えて
一つづつ運んでる
小さなバラの蕾を
ひとりぼっちの
あの子のポストに

あの子はもう一年も
朝日の中でバラを見てる
誰が届けているのか
あの子は気にしなくなった

花瓶にさすと
ゆっくりと咲くバラ
あの子はいつも思う
私も咲く日がくるのかしら

部屋いっぱいの香りのなか
綺麗ねと言いながら涙する
妖精は知ってる
この子はひとりぼっちだけど
心に妖精の魂がある

満月が山を滑るように昇ると
あの子の小さな庭が照らされる
いくつものバラが風に揺れる
挿し木にしていたバラが
真っ赤に庭を染めた

人に恋した妖精は
辺り一面のバラを
いつまでも飛んでいた
人になるのを夢見て



自由詩 恋する妖精 Copyright 丘白月 2019-11-16 07:19:36
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