生まれた土地と育った歳月
こたきひろし

生まれた土地と育った歳月

人の命の岸辺に深く打ち込まれた杭
けして抜けない
もんだ

戸籍に記された
名前と生年月日

頭の中に印字されて
いつ聞かれても
書かされても
覚えて
いるさ

それを死ぬ瀬戸際まで
淀みなく
答えられたら
幸せかもな

運良く
女房子供持てたよ

だけど
その分は
多く泣いたよ
時には喚いたさ

振り返られば
それも幸せに幸せに思えるまでに
歳を重ねてしまった

女房子供持てたよ
すっかり歳を取ったよ

それでも
俺の娘くらいに
若くて健康な女のこに
ついつい目がいくのさ

お爺ちゃんにになっても
男はまだまだ
衰えてない
大人しくなってくれない

娘が知ったら
一言
お父さんいい歳してキモいよ
それに
お母さん可哀想だよ
幾らお婆ちゃんになってしまったから
って
くらいに
言われて
軽蔑されるにきまってる

だから
それは絶対秘密
いいお父さんでいるよ
勿論
家庭の平和を守るヒーローでいたいから

俺の没年月日を刻んだ墓場の石に
花を供え
水をやさしく
かけてもらいたいからさ
娘たちには

そんな
贅沢な夢を見るようにも
なってしまった

ここ最近



自由詩 生まれた土地と育った歳月 Copyright こたきひろし 2019-11-16 07:05:46
notebook Home 戻る  過去 未来