夏空
日々野いずる

グリーンアップルがひしめき合う
果汁の滴る林檎の街だ
ぐずぐずに崩れた果肉は羽虫を呼ぶ
その絵が飾られている車窓
息がガラスにあたって
白くくもる
湿度が上がっていく静寂に負けて
音楽が揺れ
電車と同じリズムを刻んでいる
スキップでかける
雪が降ってる

そうそう、
ずっと前のことだけど
一緒に行った花やしきの
ジェットコースター楽しかったね
八月の空気が
暑すぎるのはよくない
アスファルトさえ溶けるのに
きみが溶けないはずがなかったんだ
やっぱり海に行けばよかった
きみは人が多いからって嫌がってたけど
手足を痛める濁った温度が落ちて
波にしずめられて
もう少し長く言葉を話せたかも

とてもいいひとだったきみは
体と体温を削ぎ落とした
溶かす雪は
どんどん どんどん
もこもこもこもこ
その入道雲の白さを増長させる

海で見つけた貝殻を拾った
部屋、窓辺、コップの中で白く
陽光にきらきら眩しくて
目に染みる
手紙を書いた
きみへの手紙


自由詩 夏空 Copyright 日々野いずる 2019-10-19 07:27:10
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