亡き母との旅、そしてー
日比津 開

たった一度だけ
母と2人だけの旅

あれはもう遥か昔のことになる
まだ元気に歩けた母を誘って
伊勢志摩の旅に出た

三河湾、伊勢湾を船で渡り
鳥羽に着き
英虞湾まで足を伸ばし
華麗なる一族のオープニングの
舞台となったホテルに宿泊した

名物の鮑のステーキを
メインとしたディナー
母と息子が一緒にした
フランス料理はこれが最初で最後
思いっきり贅沢をした

親子2人で巡ったのは
真珠の博物館
夫婦岩
あじさい寺
そして伊勢神宮
母が一番喜んでくれた場所は
どこだっただろう?
花が好きだった母のこと
あじさい寺かも知れない

帰りには名古屋に寄り
幾つかの名所を見学し
母と2人の旅は終わった

親孝行と言えるほどのことは
何もできなかったけれど
こうして旅の記憶が残っている
喜んだのは、幸せだったのは
母より僕のほうだったのかも知れない

この秋、再び伊勢志摩を
訪れようとしている
そのときは、母との旅が
もっと鮮やかな思い出として
蘇ってくるかも知れない

新たな旅では、きっとまた
良き思い出を追加することができる
母は喜んでくれるだろうか?
今度の旅も僕は大切な人と
2人で行く予定にしているのをー


散文(批評随筆小説等) 亡き母との旅、そしてー Copyright 日比津 開 2019-10-19 04:06:58
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