ビール飲みながらまじめな話なんかしてはいけない
Lucy

通り過ぎていく物売りの声が
私を非難したのかと
過敏になる窓の隙間から
秋風がするりと
いかにもなれた振る舞いでカーテンを揺らし入り込む

今直面している重大な問題を
言い当てられた気がして
反論の代わりに
つい反射的に迎合したのは間違っていた
言葉の棘は弱っている皮膚を貫く
耳を貸さなければよかったのだ
いつものようにただ頷きながら
ゲラゲラ笑って聞き流しておけばよかった
率直な意見を聞かせてなどと
迂闊ににじり寄ったりしたのが失敗

年を取ったから傷つかないというわけではない
むしろその逆で
あらかじめちりばめておいた地雷を
片っ端から自分の足で踏んでいる
昨夜の飲み会も自爆でした
たのしむ為だけに召集されたメンバーだったはずなのに
ふくらんだ風船が
すっかりしぼんで最終電車

改札を抜けると夜の霧雨
なるべくすたすた
歩いたのです胸張って
夜に透けていきそうなこの頼りない体を
しゃんと立てて
きれいごとのうわべだけ
なぞっていると言われても
私は
人を切りつけるより
慰めるような詩を書きたい



自由詩 ビール飲みながらまじめな話なんかしてはいけない Copyright Lucy 2019-09-16 18:23:59
notebook Home 戻る  過去 未来