あと かさなり
木立 悟







闇の紋
闇の渦をなぞる金
水を切る風
景を梳く風


手のひらの上の 見えない珠の内で
星が生まれ 消えてゆく
その光を浴び 手のひらもまた
消えては現われ 繰りかえす


音の無い線だけの警笛が
闇のあちこちに交差している
視線の端に転がる輪
金と緑につながる輪


痛覚が焼け落ちるほどの痛みに耐え
痛みを感じない身体になったのに
何も無い荒地
何も無い一人に泣くばかり


午後の灰
午後の銀と水を透り
季節のはざま 血のにおい
終わる手のなか はじまるもの


むずがゆい息と光
埃が話しかけてくる
階段に散る陽 落ちてゆく足音
壁にひらめく幼羽の群れ


無数の線の行き交うなか
何かを告げるものはなく
迷うものはただ迷い
動けぬものは夜を濡らす


息を呑み
夜をすぎる影を見る
何もかもが何もかもを
透り 透り 透りゆく



















自由詩 あと かさなり Copyright 木立 悟 2019-09-14 20:03:33
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