人と触れ合える人生
ふじりゅう

人と触れ合える人生を贈りたかった
長い廻廊の まだシャーペンも知らないところで
怪物に変えたのは誰だ
お味噌汁には丹精込めていたのに
ハンバーグを美味しそうに頬張る
あなたはにぼしの出汁がどれだけの労力か
まるで知りもしない口角で
机を拭くことを強要してくる
人と触れ合える人生を贈りたかった

人と触れ合える人生を贈りたかった
2枚重なったティッシュをわざと1枚にして
使用することが私の為だと笑ってた
バスの中でもスマホに集中させて貰えなかった
人と触れ合える人生を贈りたかった


彼女は彼を叱責する
彼女は獰猛な野獣の様に叱責する
彼女は血塗れのマチェーテを研ぐ
彼女は女性という自認を剥ぐ
彼女はゴジラの業火の様に叱責する


人と触れ合える人生を贈りたかった
カタコト バスに乗せられて最後
たんぽぽがゆらゆらと手を振っていた
始めて訪れたバス停でもない場所
砂利道のぼこぼこがやけに自己主張していた
それから とりあえず本を読んだ
そしたら 今までの私を全部否定された
それから 虫取り網を片手に
年甲斐もなく セミを捕まえに行った
それから 先は記憶が無い
人と触れ合える人生を送りたかった

人と触れ合える人生を贈りたかった
人と人が触れ合える地図を渡したかった
そこにはきっと あらゆる私の逆張りの道筋が書いてあって
優しく口元を拭いてあげることから始めていたはずだ
優しく手を繋いで車道側を歩く気遣いがあるはずだ
優しく頭を撫でる仕草で別のカテゴリへのフラグが立ったはずだ
読みきかせの最中に眠る唇に触れられたはずだ
あの本は無学が書いていただろう
あの本は無学が書いていただろう
あの本はなんなんだ
君の発展途上の髪の毛はさらさらだったっけ
たんぽぽを見ると虐めたくなる衝動
人と触れ合える人生を贈りたかった
人と触れ合える人生を送りたかった それだけ。


自由詩 人と触れ合える人生 Copyright ふじりゅう 2019-08-30 23:30:59
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