帆場蔵人

風に飛ばされてゆく葉っぱを拾いあげ
それを大切に懐にしまう人をみた
まるで栞を挟むような手つきで
忘れられてゆくはずだった葉っぱが
何か違うものに変わったのだ

ある日、出会った他人同士が肩を並べ
身を寄せ合う、引力のような縁が
葉っぱとそれを拾う手にも結ばれる

拾われる葉っぱと拾われない葉っぱの
違いなんて考えているうちに、時々
地球との縁を忘れて空に落ちそうになる

袖の振り合うも多生の縁
また、躓く石も縁の端という
すべて前世の因縁らしい

今、躓いた石は前世の恋人か
親の仇であろうか、まさか、屋台で食べた
おでんの芋、などではあるまいな

ぼくの前世は
おでんの
芋を
喉に詰めて
死んだらしい
腹立ち紛れに
蹴飛ばした
石ころが
窓ガラスを
叩き割る
なるほど
あのガラスと
石ころも

きっと、縁があったのだろう
人の生には無数の縁が織り込まれ
たまにあの葉っぱのような
縁が、ふいに宇宙の風に吹かれて
孤独な引力につかまるのだ


自由詩Copyright 帆場蔵人 2019-08-18 23:12:38
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