緑陰を行くとき
ざわめきになぶられ
足音すら影に吸い込まれ

山野の骸になり
骨を雨風に晒して
いつのまにか
苔生していく
もう
誰にも
祈られない
石仏の膝もとで

やがて ....
月夜の庭の物陰で土と溶け合い
消失していく段ボールの記憶よ

何が盛られていたのか、空洞となって
久しく、思い返すことはないだろう
お前は満たされた器でなかったか
瑞々しい果実と野菜に陽の ....
遠い国の少年の歌声が柵を乗り越えて
仔馬がいなくなった落日に秋が来た

枯れ葉が地を水面をうちながら
次第に翳る空の気まぐれに高原で
樹々に寄りそう祖霊たちが笑っている

やがて色褪せて ....
夏の角が丸くなっていくのは夕刻です

角砂糖はアルコォルに融けながら
炎に包まれ送り火が星に燃え移ってゆくなかを茄子の牛がゆたりゆたり歩んでいきます

祖父だけは胡瓜の馬に乗り、秋や秋や、と ....
春、の終わりにとらなかった電話の着信音が夏の終わりに鳴り響いている。とても静かな夜、足音も誰かの寝息もブレーキを踏む悲鳴もふいに止んで着信音が何処かで鳴っている。トイレに座って狭い場所で口から漏れるの .... 風に飛ばされてゆく葉っぱを拾いあげ
それを大切に懐にしまう人をみた
まるで栞を挟むような手つきで
忘れられてゆくはずだった葉っぱが
何か違うものに変わったのだ

ある日、出会った他人同士が ....
お日さまをつかんだ
ちいさな手、まだ開かない開かない
蛍になるか、星になるか、それとも
お月さま、猫の瞳かもしれません

お日さまをつかんだ
ちいさな手、まだ開かない開かない
ギュッと握 ....
張り詰めたガラスはため息を吐くように割れていった。冬の静寂にすべて諦めたように、身を投げた人びとのように、ひと息に去りゆくものの気配に、なにが言えようか。握りしめた石を凍った池に投げつけていた幼い記憶 .... 片われをなくした
ビーチサンダルが
木陰で居眠りしている
その片われは今、どこで
何をしているのだろう

波にさらわれ海を渡って
名も知らぬ遠い島で椰子の実を
見上げて流離の憂いを抱く ....
竜笛が竜の鳴き声であるなら
詩も竜の鳴き声でなくてはならない
ドーナツに穴が空いているなら
詩も穴だらけでなくてはならない
人が嵌って抜けられなくなる
罪深い穴を我々は掘り続けている
なん ....
ひとつ 齧れば夜が欠けて
林檎は白い肌さらし
屋烏に及ぶ口笛の哀しき音いろに
艶めいて 夜の香りを染めていく

ひとは哀しく身はひとつ

ひとつ 齧れば夜が ....
苦しみの吐息に
吐息を返しては
沈黙を掌に掬い
いたわっている

理解は出来ず感じることしか出来ない
砂粒ほどの些細な重みが
僕に付着して堆積していく

払いのけることもなく
ある ....
とり忘れられ
赤々と熟れ過ぎた
トマトが、ふと
地に落ちひしゃげ
鴉が舞い降りた

赤い飛沫を舐めとるように嘴で何度も
つつき、カァァァァァァ、と鳴けども
人びとは潰れた野菜など気 ....
1 夏雨

梅雨の長雨にうたれていますのも
窓辺で黙って日々を記すものも
ガラス瓶の中で酒に浸かる青い果実も

皆んな夏でございます

あの雨のなか傘を忘れてかけてゆく
子ども、あ ....
あるくとおく、流れ流れて
流されてきた弱さを恨むのか
水にとけた光に問いかけた
転倒した月日の果てしなさ

ただ勘違いしていただけだ

月日は数えるだけしかなく
切り売りして歩くお前な ....
前庭に鯨が打ち上げられて
砂が、チョウ砂が舞い上がれば
世界は揺れて空と大地は
ぐわぁんぐわぁんと回転しながら
遠ざかったり近づいたり

もしチョウ砂が黄砂のように
気流に乗るなら、あの ....
そろりそろりと剥ごう
皮をつつつ、と剥ごう
夜を剥いで朝を剥いで

私というものが
どこでもない場所で剥き出しで
死んでいる、或いは

台所で皮を剥がれた
剥き出しの野菜や肉に混じっ ....
自分が動けば影が動くことを
不思議に思ってしまった少年は
影の、また、影の連なりに戯れ続け

いつのまにか大人と呼ばれるようになり
ふと、空を仰ぐ、影が空に送られていく
少年は空にあり空は ....
サンザシの花咲き
山椒の粒、匂いはじけ
街灯がポッポッと灯り
夕餉の匂いとけだす
懐かしいその匂い
五月が過ぎてゆく

帰る家もなく
靴はすり減るばかり
腹はぐぅぐぅなるばかり
月 ....
あれはいつだったか
陽炎にゆれながら倒れゆく馬をみた
北の牧場をさまよったときか
競馬場のターフであったかもしれない
或いは夢か、過労死の報を聞いた
快晴の街角であったかもしれない

或 ....
雨の雫に濡れた畑の瑞々しさ
自然を開き破壊して得た日々の糧
だからこれほど輝いているのか

ぬかるんだ畑に足あとがみえる
だれの足あとかは知らないが
きっとだれかの足あとで

あなたも ....
そうして雲海は焼け落ちて
さよならすら許さない晴天

山を下ろう沢の流れに沿って
箱庭みたいな町に足を踏み入れて
あの角を曲がりこの角を曲がり
パン屋で焼きたてのフランスパンを
その先の ....
近所の魚屋にギターが売られていて
魚屋のじい様、年季の入った海軍御用達の
看板を磨いてぴかぴかにして笑っている

こいつはまた活きのいいギターじゃないか
そういうとじい様は息子が若い頃に弾い ....
すべての川は流れている
すべての故郷の川は流れている
耳を傾けるならその川の流れを
聴くことができるだろう

乾ききった風と砂しか入らない
窓からせせらぎが流れてくる
台所の床をひたして ....
窓から
射しこむ
ひかりに揺れる
小さな寝顔のうえで
未来がうず巻いている

シエスタ
君は宝島を見つけたのか
シルバー船長や
オウムのフリント
うず巻く海原を越えて
高らかに ....
おまえの手には
もう半ば潰れた
折鶴が死んでいた

折鶴がまた羽ばたくことを信じようとする
瞳に縋りつきたい誘惑、がある
だけど、告げなくては
いけないのだ、小さな手よ

おまえの手 ....
歌が、つたっていく

庭の忘れられたような手水鉢に
雨どいからひとしずくひとしずく

水はいつか溢れるだろうか

歌が
ひとの器から
溢れだすように

きくものをえらばない
染 ....
夢みつつ、ひとつふたつ
昼間から夢ばかり数えて
そんなあなたには猫だって
退屈を噛み殺しているわ

そんな皮肉にもぼくというやつは
こたえもせずに退屈ってのは
どんな味がするんだい、と
 ....
枇杷の実、たわわ、たわわ、と
ふくれた腹をかかえて転がりそうな
夕陽に照らされ景色をゆすって風を
くすぐり、たわわ、たわわ、と

悲しげな
その実に
歯を立て

しごきとる、なぜにこ ....
手を
引かれて見知った町を歩く
老いた漁師の赤らんだ手が
まぁ、まぁ、呑んでいきな、と手まねく

あすこの地蔵、おどしの地蔵さん、脅しな
明治の頃、沢山の人がコレラで死んだ
焼き場はい ....
帆場蔵人(190)
タイトル カテゴリ Point 日付
山を歩く日自由詩319/9/22 18:28
虚舟自由詩5*19/9/16 19:47
秋へ向かう歌自由詩5*19/9/16 8:16
夏の角自由詩3*19/9/2 1:05
夏の終わり自由詩019/8/28 13:10
自由詩419/8/18 23:12
ちいさな手自由詩219/8/14 19:18
転寝自由詩219/8/14 19:12
片われの夢自由詩4*19/8/9 1:21
戯れ言自由詩119/8/4 18:35
夜香自由詩7*19/7/31 22:57
悲しみもなく自由詩319/7/28 14:21
夏の階に立ち自由詩11*19/7/22 23:44
夏の記し(三編)自由詩719/7/15 20:53
痛み自由詩11*19/7/7 21:33
眩暈自由詩7*19/6/25 23:38
剥き出し自由詩8*19/6/22 22:30
かげおくり自由詩11*19/6/20 20:41
五月が過ぎて自由詩519/6/19 23:31
倒れゆく馬をみた自由詩7*19/6/11 15:24
雨後に自由詩1019/6/8 0:57
だいたいそんなもの自由詩519/6/5 19:24
魚屋でギターを売っちゃ悪いのかよ自由詩4*19/6/2 3:05
それぞれに川は流れている自由詩15*19/5/30 23:06
午睡の刻自由詩519/5/28 2:34
鶴を折るとき自由詩719/5/27 21:16
うたとみず自由詩619/5/26 0:14
のんべんだらり自由詩4*19/5/23 23:29
枇杷の実ゆれて自由詩1019/5/22 23:13
自由詩719/5/22 13:43

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