夜香
帆場蔵人

ひとつ 齧れば夜が欠けて
林檎は白い肌さらし
屋烏に及ぶ口笛の哀しき音いろに
艶めいて 夜の香りを染めていく

ひとは哀しく身はひとつ

ひとつ 齧れば夜が欠けて
林檎がひとつ染まるなら
林檎がひとつ砕け散る 悲鳴の音いろを
みるがいい 哀しき色はどんな色?

苦いか甘いかしょっぱいか、ひとつ齧れば
屋烏は飛んで雲隠れ 林檎は色を失った
朝陽に紛れ延びた手が林檎を高く放り投げ

林檎はひとつ、日もひとつ

















自由詩 夜香 Copyright 帆場蔵人 2019-07-31 22:57:03
notebook Home 戻る  過去 未来