戯れ言
帆場蔵人

竜笛が竜の鳴き声であるなら
詩も竜の鳴き声でなくてはならない
ドーナツに穴が空いているなら
詩も穴だらけでなくてはならない
人が嵌って抜けられなくなる
罪深い穴を我々は掘り続けている
なんて非道な輩だと末には腹に
穴があけられるだろうから
夏にはとても風通しが良くなる
風鈴だって吊るせるだろう

もういなくなった二匹の猫たちの
首輪を指で回せば腹の穴を猫たちが
通り抜けていく、猫を追うように
指先から腹の穴に入ればするすると
身体は穴の中に吸い込まれてしまう

どこか遠い草原で
汽笛でも霧笛でもなく
少女が竜笛を鳴らすとき
どこまでも平らかな草原は
竜の背であり猫たちが
少女と戯れて……

猫たちの首輪は部屋の隅に転がっている
ドーナツの穴を食べても腹の穴は塞がらない
生きてるから穴を掘り続け、いつかそれが
墓穴になるのだろうか、台所の鍋の蓋を
とれば底に焦げついた私が横たわり

竜笛が竜の鳴き声であるなら
詩も竜の鳴き声でなくてはならない
ドーナツに穴が空いているなら
詩も穴だらけでなくてはならない

そう叫び生き絶えた


自由詩 戯れ言 Copyright 帆場蔵人 2019-08-04 18:35:37縦
notebook Home 戻る  過去 未来