友人
ツノル


S君の身体は真に要領のいい奴とできている。
だからわたしはS君の身体を離れて住処を変えようと思っている。
ところがこのことを未然に察知したS君は自分に切り替えを命じたんだな。
血の流れを切断してわたしの増殖を奪おうと模索し始めた。
思ったとおりわたしの増殖は止まり、
、腐りながらみるみるうちに痩せ細っていくんだ。
なんてことだろう。このしがらみは死を待つばかりの他意を意味している。
わたしには彼を殺す理由もない。ただ生きたいだけなのだ。
強い決意で彼は命じた。
いまならまだ間に合うかも知れない。
こころは分断され、意思の伝達は迷っている。
彼と彼のこころが迷っている証拠だ。
わたしは生き抜くために決断しなければならない。
移動しなければ、わたしが彼の決意に負けてしまう。
腐り始めたS君の身体、もう必要はない。
免疫を浴びた膿が、また正義を口にし始めた。
わたしには多くの仲間たちが待っている。
乗り変えよう
彼の脈を辿り、彼の愛するヒトのもとへ。








自由詩 友人 Copyright ツノル 2019-04-06 03:58:03
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