甚だしくも友人と誓い
ツノル


更年期が近づいてくる頃には秋霖も枯れているの、彼女はそう言った。

ところでKという若者は今頃どうしているのかと思う。
はじめは仲のよかったSの本性が見えてくると、Kは次第に距離を置くようになった。
そんなKもはじめて買った新車に落書きをされたとき、真っ先にSを疑ったのはわたしとて同じだ。
その後何かと苛め続けられたKがキレて辞めたのかどうかは知らない。
彼の無垢で明るい性格が、当初とはまったく別人のように変わっていったという事実は、いまだにわたしの脳裏にはっきりと刻み込まれている。
Sがアルバイトで働いていた七里塚死体処理係という部署にはYOという気の弱い男も働いていた。
もともと精神的に疾患を抱えたこのような男が粗暴な部署にやってくるのが間違いだろう。
後々、彼も自死と疑われるような不審な死に方をするが、とにかくYOという人物もよく苛められていた。 
部署も昼休みになると決まって仲間内で将棋を囲んでいたが、得意だったYOは必ず口を挟んでくる。
将棋の強いのが気に入らないシュウがYOに向かって唾を吐きかける。それでも顔にかかる唾を拭うと、喜んだようにシュウのつまらない手捌きをいちいち教授してみせるのだ。
しつこいYOの口先に火が付いたシュウは、怒鳴りながらYOの顔を殴りつけるが、周りは驚きもしない。
YOが兄貴分のようにシュウを慕っているからだ。しかしこころから慕っているというのは、彼の本心を考えると間違いだろう。
彼はシュウに見捨てられて、相手にされないのを恐れていただけかも知れないのだ。部署の皆が日頃からYOの挙動不審な言動には距離を置いていたからだ。
不思議に思い、わたしも何度か尋ねてみたことがあるが、いつも決まって余計な詮索をするなと言わんばかりにわたしを目の敵にする。
そんな彼には理屈が災いした。何が正義で何が不正であるのか、理不尽にもはじめから気づいていたのだろう。
この腐りかけた死体を炉で燃やし、いずれまた再生しなければならない。
まんまと皆を騙していた彼は、その術を理解していたのだ。

椿には萎えた頸が七九萌え、血糊に臓器と糞尿の頭文字を悼む。不知火の矢の如く。大地を潤す禿鷹の群れ。
叫ぼうか。彼らもまた、奇骨と生涯の業を燃やす。
哀れ秋霖と咳も散る、愚兄ども囲う漏斗が花びらよ。




自由詩 甚だしくも友人と誓い Copyright ツノル 2019-04-08 02:48:23
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