チョコレートの春
オイタル

低い電線が空を結ぶ春の通り道
見えない花粉たちのように
子供らは散ってしまって
もう影もない

僕は薄い布団に丸まって
よそよそしく朝を呼吸する

枕元のチョコレートを少しかじって
枕を被って少し泣いて
それからもいちど布団に潜る
近いところを飛行機の爆音が滑る

ずっと地面に近い方で
「いいかげんにしなさい」と
誰かの声
繰り返し誰かの声
僕は何か不満をつぶやいて
それから不安げに窓を開ける

春だ
見えない電線を影が結ぶ空の通り道
子供らのように子供らは薄く息絶えて
もうそれは花粉でさえない
僕の夢のすぐそばを
飛行機の爆音が滑っていく

繰り返し枕を叩いて
繰り返し窓を開いて
チョコレート色の布団のそばを
飛行機の爆音がゆっくり滑っていく


自由詩 チョコレートの春 Copyright オイタル 2019-03-18 21:40:49
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