蜜柑
湾鶴

時折流れつく蜜柑の
丸みに潜む甘い臭いに誘われて
流れつくイヴの波は彼方より
来る日も妄想しつづけた姿は
脚色をおびて尚一層輝く
焦がれて乾いた唇へ
一房与える
鼻の奥まで注がれる豊香
艶やかな肌が放つ視線
もて余す時間は体温をつたえ
開放される
蜜柑と
夕闇との平面感覚は混濁され
薄皮から弾け飛ぶ果汁
咀嚼する地盤に飲み込まれてゆく
加速するたび足の裏にじんわりと
汗がにじむ
実の質が迫る度に酔い
皮を剥こうとまた伸びる腕
炬燵から伝熱した誘惑が疼く
蜜柑の岸


自由詩 蜜柑 Copyright 湾鶴 2005-03-15 01:48:27
notebook Home 戻る  過去 未来