無題
◇レキ

世界へつながる大穴が開いて
手を摑んだら飲まれて心が腐った

心が腐れば
ケモノは生きるだろう、と

代弁者がただ不安を配り歩いて

代弁者はなぜ自分に穴をあけながら
人の心を泣かせたがるのだろうと聞いてみたら

生きることは美しいと言い続けていたいから、だそうだ





破滅の使者がやってきた
一時の虚無に食われて死ぬくらいなら
ずっと虚しいままに生きなさい

そういって使者は小5から始める
道徳の教科書を配りだした


世界は腐った そして生きた


ただ ひなひなとよどんだ水面を飛ぶ
糸トンボが鮮やかだった





平和の使者がやってきて

虚しく生きるくらいなら
血を塗り合い踊りなさい

そう言って平和の使者は
生れたてに戻る尺取虫の毒を配りだした


世界は生きた そして滅びた


埃っぽい空気の中でただ呆然と空を見上げる
猫が美しかった





平和と破滅が

手をつないでやってきた そして言った

私らは神様で
生きていないから完璧です

君たちは偏りで
どうしたって生きれると罪だ
なんて醜いんだ、と

世界に苦しみと悲しみと
どうしようもない困窮が吹き荒れました


雲は壊れ、崩れ、泣き、溶け、ぶつかり、混ざり
そして真っ赤に染まりました


自由詩 無題 Copyright ◇レキ 2017-10-13 22:08:13
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