【批評ギルド】『ぬるっこいサンプル』みい
Monk

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人が人を理解するしくみというものを僕は知っているし、あなたも知っている。
だけどあなたが僕にそれを教えてくれるとしても、僕には役にたたない情報だ
ろう。逆も同じだろう。だって答えは人それぞれで違うものだから。という常
套句を否定しよう否定しようと頑張ってきたこの20分。だって人それぞれなん
て答えはつまらないじゃないか、どこで笑うんだそれは。でもこの20分、時に
は山を越え、時には山羊にまたがり、考えられる全ての手を尽くしてみました
が否定しきることはできなかったのでした。

「ぬるっこいサンプル」は1〜6に分けて主人公であるこのコ(以下このコ呼
ばわり)を知るためのヒントのようだ。このコからすれば、あたしを知っても
らうためのヒントだ。このコの部分切り出し、ユーモレスクであり魚上手であ
り、たぶん日当たりの良い場所で一日に何度かくるくるまわっている女の子だ。
こんなヒントで「ああ、なるほどね」と言う人は、なるほどね病の人だ。いつ
もいつもとりあえずそう言いやがるお人だ。このヒントは理解されるためのヒ
ントではなく、そうだねサンプルだ。標本。ばらまいておくしかない標本。こ
のコもたいへんなのだ。彼女なりの筋書きもあるのだろうが自分で説明しなが
らやっぱりわけがわからなくなっていくのだ。もちろんその標本、指標値を長
い年月をかけ仮説検証していけば真実に行き着くかもしれない。でもその真実
も、突如現れた一人の天才によって簡単に覆されるかもしれない真実なのだっ
た。

ここで「あなた」と呼ばれる人、すなわちこのコの相手の人はきっと質問を投
げかけられている。1〜6に渡って、1〜6のれぞれの世界で、1〜6それぞ
れのこのコに。質問はある種のSOSかもしれない。特に3の連はこのコを救わ
ないと、このコはこのコ自身を抱きくるめてまるまって、ポンっと音を立てて
なくなってしまうかもしれない。そんな気がした。ドキドキする。僕は男だか
らかな、「あなた」の立場になってこのコのサンプルを眺めてしまう。ツイー
ドの目をぎゅうぎゅうにいせこんでみたくなる気持ちも、割り切れない数字に
叫ぶ気持ちもなんとなくわかる。僕もどっちかと言えばそっち側の人間だ。
「もうすこしだけすかすか」とか言われても「どういったことなのか、詳しく
具体的に教えてくれないか」と言ってしまう側の人間なのだ。
こんなぬるっこいサンプルを見せられたら、きっと歯がゆくてイライラしてし
まう。
「あなた」の人も手を尽くすかもしれない。でもそれは「あなた」にとっての
手段であり、二人にとっての手段とは違うかもしれない。どんなに努力しても
埋まらないかもしれない。で、そのうちに一人の天才が現れ、真実はもう手の
届かないところに(涙が出てくる)。

もちろん第三者客観的視点というやつも持ち合わせがあるので、まぁうまい具
合に落としどころっていうのもあるだろうさ、とも思うけど。読み終わって、
余裕の表情で言ってみたりもするけど。じっくり読んじゃうとダメだな。なん
ですか?小悪魔?くるくる回る小悪魔?でも事態は深刻?着々と深刻?わー、
どうにもこうにもならんぜよ的な(どんなだ)破壊力があった。一番最後の問
いかけなんか絶対答えられそうにないぜよ。頭抱えるし、訪れた沈黙にいった
いどう対応したらよいかパターンA〜Gまで総当たりフルスロットル(ここま
で0.2秒)だな。

少し余裕を取り戻してまとめると、萌えたな。だいなしか。ここまで書いたこ
とだいなしか。あーこの文章ぜんぜんかっこよくないな。もっと男女の距離感
とかスタンスの力加減とか人が人を理解する時の深淵とかそういうことを書く
つもりだったが、そういうことをグダグダ思ったのは読んだ後だった。読み中
はもっと巻き込まれていろいろ想像した。それで十分おもしろかった。



散文(批評随筆小説等) 【批評ギルド】『ぬるっこいサンプル』みい Copyright Monk 2005-03-11 21:07:40
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