ぬるっこいサンプル
みい
1
あのお姫さまみたいにうそぶくあなたのその声の中では
死んでしまった方が、良いのですか
初めてそんなことを思いながら
今日もピンを刺します
このピンでは、手のひらを
1センチだけ刺すことができます
荒い目の
ツイードをぎゅうぎゅうにいせこんで
合わせるべきところと合わなくなりました
もうすこしだけすかすかの、誰かに逢いたいの
咳く、あたしと
名前が同じだということを知っていますか
2
お兄ちゃん、あたしと一緒に行こう?
ユーモレスクを誉めてくれたお兄ちゃんと仲良くしたいの
はらわたを
ちゃんと取り除いて食べさせてあげる
片面ずつ焼きながら、魚と
目が合って それでもなお
焼く
ということが
今の世界で
3
層になる、
つないだ手、を、
層になる、
脳のその、つないだ、手、を
ステレオで、しよう、いや、
唇なら、うまくいく、のでは、ないか、と
だまる、
だまるところでは、
なくなる、
ふいうちで、ななめ、から、つまんないと似てると誰かが言った愛してるを
耳に、
つなげて、
きこえるというのはとてもあたたかく
べつのところでべつのものがまた
わたしのものになるかいかんと
層で
埋もれ
その中で不安ですかと聞き
抱いてあげる
と
言い
4
鉄、と呼ばれるお姫さまとファミリーコンピュータの中で
あられもないピーチ姫の世界を奪い合う
鉄は
都合が悪くなるとパラフィンで世界を固め
あたしは
パラフィンでデザイン画を描き
今日がはじまります
今日とは
どこからのことなのかというところだけが
みんなばらばらのまま
5
腕時計が13を指します
ユーモレスクを誉めてくれたお兄ちゃんと仲良くしたくて
タランテラを誉めてくれたあなたと仲良くしたくて
アラベスクを聴かせてくれたあなたと仲良くしたくて
五線を次から次へとぱらぱらと茹でながら
丁度良いアルデンテの頃、ぽこぽこと拍手が沸き上がるように
ただ台所で突っ立っているあたしはたぶん
とても冷たいのでしょう
隣の壁も冷たいのです
真っ白でまるでほら、雪が降ってきました
一晩中降り続けた雪で土も真っ白になり
これが
世界の果てだと震えながら
そこに立っています
時間がまるまってついに13を突き刺します
あなたは割り切れないと言って泣き叫び
抱いてあげる、唐突にまるめて、
拍手がやみました
伸びきった五線は体温とおんなじ温度になり
あたしは
おんなじ13で割ってしまいたいのです
6
太陽の見過ぎで
とけてしまった
なんといっても
世界の果てだったのだから
返事が来なくてよかった
今も咳く、
あたしの名前を本当に知っていますか