五線譜の海
まーつん

静寂は海

途方に暮れた作曲家が
ペンを投げだし
付く吐息

白紙の五線譜を
群れ成す音符が泳ぎゆく
虚しい幻

目を閉じて
内なる海を前に
立つ

足元に打ち寄せる
水の感触は
波立つ己の心の甘噛み

裸になって飛び込む
銀色の海に

そんな風にして、
作曲家は、己の心に潜水し
魚の航跡に、旋律を読み取る

捕まえるのではない
釣り上げもしない
共に泳いでこそ…
その行き先がわかる

色鮮やかな、サンゴ礁か
墓場のような、岩礁か

喜びや悲しみを宿した
震える音の塊は
求める居場所を忘れない

くねる体の背や尻に
ヒレを生やして
迷いもせずに
道を辿る…


自由詩 五線譜の海 Copyright まーつん 2017-07-07 00:52:13
notebook Home 戻る  過去 未来