命の航跡
まーつん

 深く蒼い秋空に
 一筋、また一筋と
 白い傷跡が
 泡立ちながら引かれていく

 暗い海溝にも似た
 幾壽にも奥まる天蓋の懐
 ある晴れた日、小高い丘に寝転がり
 青草のにおいを味わいながら
 私は、宇宙への入り口を見上げている

 
 磨き上げられた
 ガラスの球に
 無数の爪痕が刻まれていく
 それは、命の航跡
 無垢な宝石だった星の表に
 傷つけ、傷つきながら
 生を演じていく魂たちの軌跡が残る

 神の指先が
 星/球を撫でる度に
 その爪の尖りが、無垢な肌を
 傷つけてしまうように

 星は赤ん坊のように
 与えられた運命の元で
 傷つきながら成長していく
 それを糧として大人になるか
 痛みに耐えかねて、死を選ぶかは
 
 痛みを与える私たち
 生命の振る舞いに
 人の営みに
 かかっているのだ

 無限に広がる空の大きさが
 一粒の星の丸みとなって
 この掌の内に
 収まるとき

 私は、ついに
 愛の正体に触れたような気が
 してくるのだ
 


自由詩 命の航跡 Copyright まーつん 2016-08-31 19:49:21
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