残心
えこ

飛魚が跳ねた
決して飛んではいないが
それを目で追う切っ先
閃光と刹那
汗を振り切った海面
四ミリメートル違った心
真空をまた飛魚が跳ねる
飛ぶことはないはずが
生きてこそ
その三六センチメートルの軌跡
刃はこの掌から飛び立てずに
七ミリメートル届かない
ただ踵は地面を踏み
叫びは空気を揺らした
震える虚空をまた飛魚が跳ねる
飛ぶように力強く
その軌跡を切っ先は追う
四二センチメートルをなぞった刃は
閃光と刹那
ゼロミリメートルの残心


自由詩 残心 Copyright えこ 2017-06-12 22:35:56
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