basement
opus

黒猫の目玉の中に白い顔が写る
赤い唇が漂う
それが写真の中の全てで
僕はソファに寝そべっているのだが
何だかそわそわしてしまう

強い陽光に子供達の日焼けが生える
ビニールの水泳バッグと塩素の香り
言葉に意味はないのだが
その響きは空気の振動を変える
がたがたと進むバスの中
うつらうつらと笑みを浮かべながら
老婦人が身体を漕ぐ

何が基準で、何が良いのか
そんなの人それぞれ
でも、国による文化や気候、言葉などで
ある程度は似通ってくる
聞く曲や読む物語、人生の経験などでも変わってくる
遺伝子の囀り
文学の色合い
虹色のコミュニーション

「ねぇ。」
話しかけられてそちらを向く
「タバコ持ってない?」
持ってない、そう答える。
「そう。」
つまらなそうに後を去る
彼女とはそれっきりさ。


自由詩 basement Copyright opus 2017-06-10 21:37:27
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