wonder boyA
opus

はしたない香り
騒々しい夢
あぁ、休日だというのに
ひそめやしない

コントロールされた事情
紫色の花
黒い残像

ふと、自転車
トラックに突っ込む
10歳ほどの男の子
運転手降りてきて、
「坊主何してる?」
坊主、顔を上げ
「父ちゃんの仇‼︎」
そう嘆く

父ちゃんの仇、
彼がそんな訳はないのだ
彼は僕のよく知った男で
30ばかりの男で
2児の父親だ
誰かを貶めるような考えを持てるような
男でない

そして、坊や
坊やの父親は元気にピンピンと生きている
だって、遠くの方からこわい顔して
近づいてくるものがいるが、
彼の顔は坊やそっくりだ
(彼の顔が坊やに)

坊やは右手を空に向け
こう叫ぶ
「母ちゃんは泣いていた、
父ちゃんはそれでも強く生きたのだと」
彼の右手が運転手の股間に食い込む

「すみません‼︎」

そう父親が謝るが
運転手はこう言うだけだ
「嘘だとしても見上げた坊やだ。
俺のような倍もありそうなタッパの男に
拳をあげるとは‼︎」
彼の膝は小刻みに震え続ける

坊やは父親に頭を殴られて
そこをさすっている
その口元には笑みが浮かんでいる

夏の陽光が首筋に刺さる
アイスコーヒーの苦味
明滅する照明

トラックの彼は昨年に離婚し、
坊やの母親は一昨日、万引きで捕まった

あぁ、それにしても
冷房がきつすぎる
目を瞑ると
彼の笑みが脳裏に浮かんだ




自由詩 wonder boyA Copyright opus 2017-06-19 15:03:54
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