ズルい女
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女に生まれた私は誰よりも自分自身の価値を理解しているわ
与えられた武器の使いこなし方だって当然熟知している
男達はそんな私に狙われたら最後逃れる術を知らず
精魂尽き果てた哀れな操り人形と化してしまう

ごめんなさいだけどこれは所詮一種のゲームにすぎないの
圧倒的に私に有利なのはルールブックが私の手の中にあるから
甘さと苦さのバランスを絶妙な匙加減でブレンドして
敗者である男達に嫌な気分をさせないのが私のプロ根性

例えるなら私は夜の町を自由に飛び回るバタフライ
時には隠し持った鋭い針で相手を突き刺すハニービー
貴方にも一つお裾分けでよければ用意して差し上げるわ
一緒に身も心も全て焦がすようなイケない火遊びをしましょう

クラブのダンスフロアで気になった男に声を掛けてみる
笑いかけるだけで簡単に警戒を解いてしまうなんて滑稽ね
一晩経てば忘れてしまう相手の名前よりも電話番号よりも
一番大切なのは肌と肌とが触れ合った時に感じる相性
我を見失って時には強引に迫ってくる男を前に
私は一つだけ残して身に纏ったものを脱いでいく
手の内を全て晒してしまったらこちらが不利になるだけ
口紅を塗り直したらフェイドアウトして次の店へ
プレゼントは置き場所に困るくらい貰ったわ
ピアスは前の彼から貰ってペンダントはその前の男から
バッグは誰から貰ったのか忘れてしまったわ
いらないグッズは質屋に行ってメイクマネー
ある意味ではビジネスライクな関係とも取れるわね
ほんの一時とは言えいい思いをしたのだから文句は言わないでほしいわ
続きを味わいたければ自分を磨いて出直して来なさい
その時には私はもっといい男を連れているでしょうけど

テキストに書かれているような正攻法なんて私には通用しないわ
本気にさせたければ私に見合うものを用意しなさい
この命題を解けずに何十何百の男達が散っていったわ
不敗神話を保持し続ける私はそうズルい女

例えるなら私は着の身着のまま餌を求める小猫
飼いならそうとすれば痛い目にあうのは目に見えているでしょう
束縛なんて不自由なことは生憎私の肌に合わないの
私が私らしく生きられるように真実の輝きを私に与えて

女に生まれた私は誰よりも自分自身の価値を理解しているわ
与えられた武器は時間とともに錆びていくことも知っている
命短し恋せよ乙女って誰が言ったか知らないけどクールな言葉ね
一度しかない私の人生後悔しないよう遊び尽くしてみせるわ

こんな私だから同性からは嫌な目で見られることもあるわ
ここだけの話掴み合いの喧嘩だって経験したことがある
男を取られたくなかったらちゃんと管理していなさい
こっちから言わせてもらえば隙を作ったそっちが悪いのよ
気分が悪くなったらクラブに足を運ぶの
一人で踊っていても男達の方から声を掛けてくるわ
ルーティーンワークのように同じ事を繰り返すの
心が渇いてしまわないように潤いを与え続けるの
それなりに本気になった恋愛だって一つや二つあるわ
だけどやがて退屈になって新しい刺激を求めてしまうの
ショーケースに飾られたレプリカではいたくないから
鎖を断ち切って狭い箱の中から大空へ羽ばたくわ

もしもどこかに真実の愛というものが存在してるというのなら
一目でいいから拝んでみたいものね


自由詩 ズルい女 Copyright 1486 106 2017-05-15 08:09:18
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