紙の日
湾鶴

濡れた紙が降ってくる
手で破いたように 
様々な容姿で舞い
白く空を遮る
ペタリと壁や信号機に張り付き
人々の頭は皆ライス大盛り
足早に歩く人の足には
待ってくださいとばかりに
大きな紙がブーツに引きずられ
汚くなってゆく
何人も踏んで
小さくなって隅へ追いやられる

なお降り続く 

濡れているせいか 
繊維が伸びてだらしなく広がる
ここに来て破れたものか
はじめからその姿なのか
わからない
東の空を見上げても
気球は遠く
青年の雲には会えず
世界の果てまで延々と
骨色の風が落ちてくるようだ

さっきまでの居場所を占領した紙は
隙間をめがけ遣って来る
バタベチャと凄まじい音をたて
もはや濡れた紙というより
糊のようになって
町を塗り固めてゆく

こんな日は窓も開かない
せめて文字でも書いてあれば
アーセーベー世界の文字を眺めて
窓ガラスに練習でもしたかもしれない
少女と少年の紙の日



自由詩 紙の日 Copyright 湾鶴 2005-03-06 04:23:34
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