grotesque
opus

青い空に風が通る
白いワイシャツに血が飛ぶ
右手には包丁
目の前に倒れる男の腹に
何度も叩きつける
きっと僕は叫んでる

そいつは妹を犯したんだ
妹はまだ15歳だったんだ

でも、
そいつから妹は金を盗んだ
ラブホテルに行って
男がシャワーを浴びている隙に
金を盗んで逃げた

妹は3人の男に犯された
一人は妹に咥えさせて
一人は妹に入れて
一人はビデオで撮影した

妹は咥えたものを噛み切った
咥えた瞬間に
胃の中のものと一緒に
吐いた

噛み切られた男は
ビデオをネットに流した
ネット上のありとあらゆる
アダルトサイトで
妹の裸が晒された

でも、注目されたのは
妹の身体ではなく
噛み切られるシーンだった

妹はやさぐれた
妹は荒れに荒れた
僕はそんな妹と同じ家にいたくなく
家を出た

そして、
そんな妹に耐えられなく
父と母と妹は
一緒に海に身投げした

僕は鬱になった
僕には妻と子供がいた
僕は妻と子供にキツく当たった
ある日、セックスしながら
妻の首を締めた
子供がその僕の背中に
包丁を刺した

子供は少年院に入り
妻は自殺した
僕は精神病院を退院した

ガソリンスタンドのアルバイトをして
日々の生活費を稼いでいた
そんな僕に
同じアルバイトの大学生の
女の子が声を掛けてきた

時々、その子と
ファミレスでご飯を食べて
カラオケに行って
近くの山に登った

僕はその時すでに
妹を犯した男の居所を知っていた
僕にとって人生の目的は
男を殺すことだけだった

山の上から
街を眺めながら
彼女が言った
「私、貴方のことが好きみたい」

僕は男を見つけると駆け出した
紙袋から包丁を取り出すと
それを男の腹に刺した

抜いて、刺して、
抜いて、刺して、
抜いて、刺して、
抜いて、刺して、

途中で疲れて前を向くと
そこには遠巻きに眺める人々がいた
ある人はスマフォで動画を撮っていた
ひどくムカついてそいつに切りかかった
そいつの右腕に
恐らく一生消えることのない傷跡が付いた

なんかそれでどうでもよくなった
だから、包丁を
自分の腹に突き立てた
ひどく痛くて
涙が出た

そこで思ったんだ
こんな痛い思いをしたのかって

大学生の女の子は
妹がペニスを齧りとった
男の妹だった
ペニスを齧りとられた男は
動画をネットに流した後
すぐに死んだ
彼女はその動画のせいで
ペニスを齧りとられた男の妹となった
彼女は僕の妹のことが
憎くてしょうがなかった
事の発端は妹だと考えたからだ

そして、
妹の事を探しだした
でも、妹が死んでしまったことを知った
唯一の肉親は僕である事を知った
だから、
彼女は僕に近づいた
僕の事が好きになった

でも、
僕のことを好きになって
僕に告白した
それを僕が断った
そしたら、自殺した
自分の腹に包丁を刺して

この世は実にグロテスクだ
悲しみはどこまでもついて回る
今思えば最初からこうしていれば

そして、目が覚めると
僕は中学生に
妹は小学生に
だから、
僕は言ってやった
「援交なんて絶対にするな」

「援交ってなぁに?」
そう言う妹の目はとても透き通っていて
僕はついつい泣きだしてしまった



自由詩 grotesque Copyright opus 2016-07-02 15:13:49
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