「し」
紫音

詩書きというだけで
孤独じゃなきゃいけない理由はない
詩詠みというだけで
孤高じゃなきゃいけない理由はない
詩人というだけで
厭世的である必要はない
詩というだけで
それ以上でもそれ以下でもない

言葉の奥に織り込んだ
己を否定して
明日がこないことを祈り
声を失くし沈黙することに
どこまでも固執することもない

詩とはなんだ
ただの言葉でしかないのか
ただの感情でしかないのか
意味はあるのか
価値はあるのか
そんなものは無くて良いのか
稚拙でも愚作でも
心を削り 感情を注ぎ込んで
綴ることでしかない

君の言葉は詩なのか
 私の言葉は詩なのか
君は何者か
 私は何者か
アイデンティティとはなにか
 アイロニーとはなにか

わからない

       わからない

それでもただ吐き続ける
詩という名前の言葉の束を
それがなにかもわからずに
わかるひつようはあるのか
それすらもわからずに

詩とはなんだ
迷走なのか
 幻想なのか
  妄想なのか

   なぜ詩を書く
    なぜ言葉を紡ぐ
   なぜ歌を詠む

  君は何を求める
 私は何を求める
詩は何を応える

今日は寒く
明日は雨かもしれない

世間は答えない
 君は答えがない
  私は答えられない

今日の言葉は詩なのか
明日の言葉は何なのか



混乱と混沌に犯され
血を吐き地に沈んだとしても
それは詩に至る病なのか
それとも死に至る病なのか
誰にもわからない

  詩

        死




      し


それは何なのか


自由詩 「し」 Copyright 紫音 2005-02-24 13:49:27
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