初恋ライター
あおば

        160419

お地蔵様に
お線香を立てる
火が付かない百円ライター
今では何というの
使い捨てライターー
君とおんなじだねと
お地蔵様が
典型的な顔をして笑う
だから、菩薩になれたのさ
悟りを開いて
お釈迦様にかしずいて
⑥人そろって笑っている
元祖六つ子ダあィー!と
赤塚不二夫の伝記を
長谷邦夫が書いている
彼は現代詩も書いているから
君たちの友だちでもあるんだね
と今読んだウィキの知識を披露する
お地蔵様は微笑みながら
中年男を派遣して
火の着かない百円ライターを
カチャカチャ弄っているわたくしの代わりに
大型チャッカマンの火を奢ってくれた
ありがとうございますと
最敬礼する私を気にせずに中年男は立ち去る
彼の親族かなにかの法事の途中か
それとも気まぐれか
普段着だから気まぐれか
まぐれでも良い
炎を上げるお線香を慌てて
掌で風を送って消すわたくしを
お地蔵様はにこやかに見守ってくださる
型どおりにお辞儀して合掌する
なんにも浮かばないから
無理してお地蔵様の由来を思い浮かべる
廃仏毀釈の明治の初めに捨てられたお寺から
こちらに派遣されたというお地蔵様たちは
僕らと同じようだけど
使い捨てにはされないんだよ
やっぱり、お地蔵様と言うだけあって
21世紀の世にも、手を合わせる人が多く
いつ行ってもお線香とロウソクと火が着いたり着かなかったりする
百円ライター
時々は使い捨てマッチが置いてあり
訪れる人の気まぐれにも鷹揚に答えてくれる
今日も和やかにお堂の中で笑って居なさる
やけに良いお天気だなと
引き籠もり青年も外に出たくなるようなと
ニュースを聞きながら、ラップを聴きながら
書いている私はだーれ


初出「即興ゴルコンダ(仮)」を僅か修正
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、安藤紅一さん








自由詩 初恋ライター Copyright あおば 2016-04-22 00:17:57
notebook Home 戻る  過去 未来