『森で釘打つのは誰?』
るるりら

なにもかも捨てておしまいなさいと
無闇に心臓に くりかえしていた 
いたいのいたいのとんでけとんでけの耳の指示どうりに
しでかしてしまった空虚を
空に放つと 釘を打つ音がする

清水さんちの敷地のわきから せり上がった山の木々は
切り取られ
切り株は 芯のところに まだ水を蓄えている
清水さんちの隣に入居した日を知っている年輪が あらわだった

切り株だけは 覚えていてくれるだろう
わたしの家と清水さんの間には 不思議な木があったことを
雨上がりの樹木は みな うつくしい雫を湛えていて
その中でも えも言われぬ艶やかな緋色をしてた果実。 
本には。宿木。と あった
精霊の棲まう場所にしか生らないとも記してあった

私は、窓から精霊の木を見て暮らせることを
楽しみにしていたのに 気働きの清水さんは
私が越してくる日の前日に伐採しておしまいになった

なにもかも すてようとする人々の心には
いつも なにかの理由があるでしょうね
山すそに暮らし始めて何年だろう
今朝も たくさんの切り株の芯は おぼえてていてくれる

///:『森で釘打つのは誰?』 ///
木を、こんこんしてらしたのは だれ?

こげらさんだった

未曾有だろうに
うしなわれた木々に反目することもなく
人の暮らしのすぐ お隣に 越してこられようとしておられる
あれは

こげらさんだった

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★お題バトル参加作品 題名は鈴木海飛さんからいただきました。
http://po-m.com/forum/threadshow.php?did=316267






自由詩 『森で釘打つのは誰?』 Copyright るるりら 2016-03-14 08:31:34
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