器官
乾 加津也

器官の短詩(四作)





畑に落ちた目は農薬まみれ
瞬きをひとつして
流す涙

バブル経済でも畑には朝露(ほうせき)
ひかりと温もり、太陽が
労働の背中を見つめていた

外に出るのもおっくう
もっぱら炬燵の時間が増えた
あの目が流す涙を知ろうともしない







所狭しと吊るされた、黒光りの調理器具たち
腕をひとつかくまっている
昔繁盛した厨房のこと

俺たちを
俺たちとして輝かせてくれたマスター
何があっても守り抜く

今は枯れた、たくましい血脈
重力に沿って、まっすぐ落ちたがっている
腕の望みはいつまでも叶いそうにない







穴が隠しもつ
果てしのない力を信じよう
方向音痴でも
この山脈を行き着けば
聞く以外の動詞を知ることができる







みいつけた
茶封筒のような

お粗末なのににょろにょろと




自由詩 器官 Copyright 乾 加津也 2016-01-23 11:02:07
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