みかん
藤原絵理子


スーパーの袋にいっぱいのみかん
向かいの席に座ったおじさん
着いた駅のホームで倒れた
淋しかった夜更けのホームが
めいっぱいの 太陽の色にあふれて 


スマホで救急車を呼ぶ人 
駅員に知らせようと走る人 
明るい太陽を拾ってあげる人
あたしはとっさに 持っていた傘を 
ホームの黄色い線のうえに置いた


明るい太陽が ひとつたりとも暗い線路に落ちないように 
お孫ちゃんの 小さな手の中で輝くはずだったのかもしれない
亡くなった奥さんの お仏壇を飾るはずだったのかもしれない
たくさんの 明るい太陽


うっすらと 額に血を滲ませて 
おじさんは幸せそうに横たわっている 
たくさんの太陽に囲まれて


自由詩 みかん Copyright 藤原絵理子 2015-11-27 20:53:49
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