真夜中は大嫌い
薫子
昼と夜がつながっていると知ったのはいつのことだっただろう。
それまでは、紙芝居のように昼から夜に紙をめくるように変わり、夜は朝に紙をめくるように変わると思っていた。地球の自転を知り、昼から夜へ変わるのを知ったのに、私は今度は夜の中を駆け抜けたら、人よりも早く朝にたどり着けると思って駆け抜け駆け抜け…
あの人は真夜中に来ると知った時、私は昼を駆け抜け、夜も駆け抜け、あなたのいる真夜中に早くたどり着きたかった…
優しい言葉や楽しい会話、時には低くてゆったりとしたあの声を聞きたくて
あの人のお髭が、しゃべるたびに動くのが目に見えるようで真夜中が恋しくて恋しくてたまらなかった。
だから、駆けて駆けて早く真夜中にたどり着きたかった
どんなに駆け抜けても同じ時間にならないと真夜中にはならないのに。
そして、あの人は私からいなくなり私は真夜中は大嫌いになった。
どんなに駆け抜けてももう彼はそこにいないから。優しい言葉も優しい声も聞くことはもうできない、
私はただ、そこにとどまっている。でも、地球の自転で、前と同じように時間が過ぎ、真夜中はやってくる、
私は真夜中はもうきらい。暁時にむかって駆け抜けていかないと、あの人のいない真夜中はつらすぎる…
散文(批評随筆小説等)
真夜中は大嫌い
Copyright
薫子
2015-11-11 17:34:29