【 払拭 】
泡沫恋歌

築十八年になる
カステラハウスと呼ばれる
小さな三階建ての家に住んでいる
毎週日曜日になると
潔癖症の夫と二人で掃除をする

掃除機を抱えて 嬉々と
バトルスーツをきた戦士のように
家中の埃を吸いまくる夫と
その後ろから濡れ雑巾を持って
廊下階段キッチンの床を拭いて回るわたし

毎週埃相手に
こんな戦闘をやっている我が家にあって
ふと気づいた……
こびり付いた汚れを拭いてはいるが
実は磨いてはいない
一度も磨くという概念で掃除をしたことがない

詩友の作品を読んで考えた
今までの人生で自分自身を含めて
なにか磨いたことはあったのか?
いつも見える汚れだけを拭き取って
その場を誤魔化してはいないか
払拭という姑息な手段で傷を隠してきた

埃まみれの人生と
磨かれない私がコラボして
醜悪な日常を生きているから
今さら輪を描いてみても
光りだす魂もない
汚い雑巾で足跡を拭き消すことくらいだ


  
                            2015/10/21



自由詩 【 払拭 】 Copyright 泡沫恋歌 2015-10-21 12:04:04
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