活劇
春日線香

寝苦しくて目が覚める
触手のようなものが首を締めていて
暗闇に目を凝らすと
大イカが一本の足を伸ばしている
どうやらそれが眠りを妨げているようで
一体何の了見があって、と気色ばむと
イカは悲しそうに
こちらとしても不本意ではあるのだが
絡まってしまってどうにもできぬのだ
と蚊の鳴いたような声を出す
実際それは団子状にこんがらがって
そのなかばで首を巻きこんでいる
であるならば仕方がない
わたしもさむらいの端くれとして
大イカ妖怪を斬って殺し
切り身を布団に寝直し候


自由詩 活劇 Copyright 春日線香 2015-10-18 20:21:23
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