古漬
春日線香

おいしくない漬物を買ってしまった
瓜の一種というのでそのように考えていたのだが
瓜に似つかわしくない妙な歯ごたえで
古い脂の塊を噛んでいるような感触である
また、味自体もまったく塩気を感じさせず
噛めば噛むほどぼやけた甘酸っぱさが口内に広がる
うまい具合に汁に漬けこまれて萎びた見た目と
安さに釣られて一瓶買いはしたが
これはもうどうにも食べられない
捨てるのも癪で床下に放っておいたそれを
今日たまたま取り出してみたところ
漬け汁の中で瓜からは無数の根が伸び
絡み合った根には黄色い花をつけ
まことに可憐な有様を見せたのだった


自由詩 古漬 Copyright 春日線香 2015-10-12 04:52:05
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