遺品
春日線香

生前の叔父は奇妙なものを食べていた
林から掘り出してきた一升瓶を
土まみれのまま縁側に持ってきては
ブリキのたらいに中身をあける
おそらく獣肉を熟成させたものなのだろうが
なかば液状化したそれは紫色に変じ
子供の目にはとても奇異に映った
叔父が亡くなってはや数年
思い立って林の地面を掘り返してみれば
あとからあとからあの一升瓶が出てくる
そのうちのひとつを家に持ち帰り
叔父がやっていたようにたらいにあけると
この世のものとは思えないほど芳しい
ただあまりにも禍々しい色の物体が
どろりと地上に出現したのである


自由詩 遺品 Copyright 春日線香 2015-10-10 07:50:57
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