桂馬
春日線香

わたしが桂馬をくすねてきたせいで
あの人たちは困っているにちがいない
そう思うと笑みがこぼれてくる
桂馬ひとつがないせいで
互いが互いに疑心暗鬼になり
それがために命を奪い合えばいいのだ
怨念は子々孫々に及び
一族と一族の間に消えない禍根を残す
そうなればしめたもの
ああだこうだといつまでも
憎しみの炎を燃やすのだ
誰も想像できないような
闇の坂道を転がっていくのだ
ああ、そうだ本当に
わたしが桂馬をくすねてきたせいで
あの人たちは困っているにちがいない


自由詩 桂馬 Copyright 春日線香 2015-10-09 01:06:20
notebook Home 戻る  過去 未来