言葉より前
藤原絵理子


深い森の中を彷徨っていた あの頃
草木の名も 花の色さえも知らないで
認識は ぽっかりと開いた陽だまりの草地に
唐突に現れて 「境界」 を教えた


黒い雲の切れ間から洩れる 血のような夕陽を見て
怖くなった 平穏の対極に不安がいることを知った
世界は天秤の皿の上 均衡を保っている
傾けても 生への意志が バランスを保とうとする


遠い昔 真っ白い空洞だったことを忘れ
色とりどりの言葉で 言い訳の壁を作って
境界の内側に うずくまっている


水晶は 朽ちた切り株に座って
澄んだ緑色の 流れを映している
何もできないまま1日が過ぎていく 苛立って


自由詩 言葉より前 Copyright 藤原絵理子 2015-09-07 21:59:43
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