クウ
ピッピ

1

あたしは名前を持たずに創り出された
たとえ
世界中の有象無象がそうだったとしても
彼らは
他人から呼ばれる名前に安寧の場所を探し
その名前を借りて色を持つ
色即是…
その後は
何と続いたかな


2

消しては書き書いては消し
正しい言葉など存在しない
誰かは言ったそれは
聖書に書かれている言葉だと
無宗教
あたしの辞書にたくさん並べられた無の文字が
あたしの名前を否定し続けている
そうして私は適当な名前で呼ばれるのに慣れ
自分が決めた
自分の色であった
本当の名前を無くしてしまった


3

灰色な日々が続いていた
あたしは博愛主義者だったが
ただ一つ心から憎んでいるものがあった
それはかみさまであった
言うなれば、この窓の外の液体を齎す
ばかで
愚鈍で
智恵のないものに
あたしはそう名をつけた


4

止まない雨はないと
みんな笑顔で言うものだから
あたしはいつしか青色を無くしてしまった
きっとそれは華やかな色で
むかしはみんなそういう色だったんだ
ポケットの隅に散らばっている
似たような色の粉を
ていねいに集めたりして
あたしは笑顔を殴り続けた
彼らの呼び声の中に
あたしの名前はなかったから


5

もうあたしはあたしの辞書を持つのをやめた

あたしは青色をつくることにした


6

青い色
それはあたしのことであった
切り刻んだ辞書の切れ端の
一つ一つが濃い青に浮かび
光り輝いて夜になった

死んだらどうなるの?

貴方も適当な名前をつけられて
辞書にその名前が載せられるだけ
死んだらあたしのところへ来て
あたしの子供になって光り輝くだけ

色即是…
完璧でないあたしの辞書
自分のことは
よくわからないから


自由詩 クウ Copyright ピッピ 2015-09-03 18:36:56
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